エステサロンを経営する上で、課題となるのが安定した売上と顧客満足度向上の実現です。
その解決策の一つとして、多くのサロンが導入しているのが「回数券」です。
回数券は安定した売上と継続的な来店を見込めるだけでなく、お客様にとっても施術をよりお得な料金で受けられるメリットがあります。
ただし、効果的に運用するには、適切な料金設定や残回数の管理、有効期限の設定などを決める必要があります。ここでは、回数券を導入することで得られる具体的なメリットと、その効果的な活用方法について詳しく解説していきます。
多くのエステサロンが回数券を導入する理由
多くのエステサロンが回数券を導入する理由として以下の内容があります。
- 安定した売上と継続的な来店が実現できる
- お客様への継続的なケアを提案しやすい
以下で詳しく解説していきます。
安定した売上と継続的な来店が実現できる
エステサロンが回数券を導入する主な理由の一つが、安定した売上と継続的な来店の実現です。
施術を1回受けてもらっただけでは、その後の来店が不確実なため売上が安定しません。しかし、回数券を購入してもらうことで、まとまった金額が一度に売上として計上されるため、より確実な収益を見込めます。
安定した収入があれば、新しい機器の導入や施術メニューの拡充といったサロンの価値向上への投資が可能です。結果として、お客様に新しいサービスを提案できるようになり、飽きさせることなく継続的な来店を促せます。
また、しばらく来店していないお客様に対しても、回数券の存在を活用することで自然なアプローチが可能になります。
「お持ちの回数券の有効期限が近づいております。ぜひご来店いただき、ご利用いただければ幸いです」といった案内を送ることで、自然な形で再来店を促せます。
お客様への継続的なケアを提案しやすい
エステの施術は、継続的に通い、繰り返し行うことで徐々に効果が現れるケースが多いです。回数券があることで施術回数が決まっているため、お客様の肌の状態や体型に合わせて計画的なケアスケジュールを立てやすくなります。例えば、「3回目までは○○を重点的に、その後は△△を」といった形で、より効果的な施術プランの提案が可能です。
その結果、お客様の満足度が上がれば回数券を継続して購入してもらえる可能性も高くなります。
回数券を導入する際の注意点
回数券導入にあたって注意すべきポイントがいくつかあります。
- 1回あたりの施術単価が下がる
- 役務管理の手間がかかる
- 初回の支払い額が大きくなる
詳しく解説していきます。
1回あたりの施術単価が下がる
回数券は、1回あたりの施術単価が通常の料金よりも安い価格で提供するのが一般的です。
例えば、通常60分21,000円の施術が、回数券を使って1回あたり18,000円になるとすると、単純に客単価が下がってしまいます。
そこで、施術時間を延ばすのもいいですが、決められた時間内でできる追加オプションをいくつか用意しておくと良いでしょう。フェイシャルパックをしている間のヘッドスパや、マッサージに使う際のアロマオイルをオプションのオーガニックオイルに変更するなど、少しのアップグレードでリラックス効果を高める提案も効果的です。
施術の流れを崩さずに提供できるサービスであれば、お客様にとっても「無理なく取り入れられる」メリットがあります。すべてのお客様が追加で施術や商品を購入するわけではありませんが、日頃から信頼関係を築き、お客様が試してみたいと思えるような提案をしていくことがポイントです。
自然な会話の中で、「ちょっとプラスしてみようかな」と思わせる工夫が、単価を補うだけでなく、お客様満足度の向上にもつながります。
役務管理の手間がかかる
回数券は紙で発行されることが多いですが、これには管理が大変な面もあります。例えば、お客様が回数券を持参し忘れた場合、次回来店時に2回分をまとめて消費するなどの対応が必要です。
しかし、記録を忘れてしまうと利用状況が分からなくなり、トラブルの原因になりかねません。
また、回数券を利用しているお客様と、通常料金のお客様では価格が異なるため、正確に把握しておかないと、レジ締めの際に金額が合わない場合があります。さらに、都度払いのお客様に対して回数券を利用した時の料金を請求するということも起こり得ます。
会計時のミスが積み重なると、お客様との信頼関係にも影響してしまうため、管理のルールをしっかり決めておくことが大切です。
お客様の人数が増えてきて回数券の残り回数や有効期限の管理が煩雑になってきたときは、システムを活用する方法もおすすめです。残り回数や期限の確認が簡単になり、スタッフ間でも情報を共有しやすくなります。
初回の支払い額が大きくなる
回数券はまとめて料金を支払う形式が多いため、初回の支払い額が高額になる点にも注意が必要です。通常の単発施術では数千円から数万円で済むところが、回数券では料金が10万円以上になる場合もあります。高額な料金の支払いが負担となり、購入をためらうお客様も少なくありません。
そこで、分割払いの提案や特別キャンペーンの利用などで、顧客のハードルを下げる工夫が効果的です。特に、初回購入時に追加特典をつけることで、回数券のメリットをアピールできます。
回数券を作るうえで必要な要素
回数券を作成する際に考慮すべき重要な要素について解説します。
- 料金設定
- 有効期限
- 返金やキャンセルのルール
運用の基盤となるポイントを詳しく確認していきます。
回数券の料金
回数券の料金設定で最も重要なのは、お客様にお得感を感じてもらうことです。通常料金より割安な設定にすることで、購入意欲を高められます。
例えば、以下のような料金設定が考えられます。
1. フェイシャルエステ(60分コース)
- 通常料金:1回 10,000円
- 5回コース:45,000円(1回あたり9,000円)
- 10回コース:80,000円(1回あたり8,000円)
2. 全身痩身(90分コース)
- 通常料金:1回 25,000円
- 5回コース:115,000円(1回あたり23,000円)
- 10回コース:210,000円(1回あたり21,000円)
3. 脱毛(全身)
- 通常料金:1回 32,000円
- 5回コース:151,000円(1回あたり30,200円)
- 8回コース:224,000円(1回あたり28,000円)
また、回数券購入者向けに以下のような特典を付けるのも有効です。
- 専用ホームケア商品(10,000円相当)をプレゼント
- 施術ごとに使えるオプションメニュー(3,000円相当)を無料提供
一般的な目安として、回数券の値引き率は10〜20%程度に設定することが多くなっています。ただし、近年のエステ業界では、物価上昇に伴う原材料費の高騰や人件費の上昇が続いています。そのため、過度な値引きや低価格設定は、将来的に価格を引き上げざるを得なくなる可能性があります。
価格改定は、既存のお客様に対して悪い印象を与えかねません。そのため、将来的なコスト上昇も見据えた価格設定を行うことが重要です。
有効期限
回数券の有効期限は、設定次第でお客様の来店ペースが大きく変わります。
例えば、有効期限が長すぎると「いつでも行ける」と思われて来店の優先順位が低くなることが考えられます。一方、短すぎると「期限内に使い切れるかな?」という不安から、購入意欲が下がる可能性があります。
有効期限を設定するポイントは、お客様が来店する平均的なペースを基準に、それより少し短めに設定することです。1カ月に1回のペースで来店するお客様が多ければ、10回分の回数券を8~10カ月の期限に設定することで、無理なく通いやすい上に、計画的に来店してもらいやすくなります。
また、サロンの閑散期や繁忙期を考えて期限を調整するのもおすすめです。例えば、一般的にエステサロンの閑散期と言われている1月中旬~2月、6月、11月に、期限を迎える回数券を販売すれば、まとまった来店が見込めて、閑散期の売上を安定させることができます。
繁忙期に合わせた回数券の提案も効果的です。脱毛の繁忙期は5~8月、痩身は1~8月、フェイシャルなら3~4月、9~11月となっています。また、ブライダルエステでは、4~10月(秋挙式)や9~2月(冬挙式)に需要が集中します。タイミングを意識することで、より効果的に回数券を活用できます。
有効期限はただ来店を促すだけでなく、サロンの売上アップにもつながる大事なポイントです。お客様に「無理なく通えるな」と感じてもらえる設定にすることで、サロンへの信頼感も高まり、結果的に長期的な関係づくりにも役立ちます。
返金やキャンセルのルール
回数券では、購入したお客様から、未使用分の返金や全額返金といった要望が出ることは珍しくありません。
高額な返金が続くと運転資金が減少し、経営に影響を与えるリスクがあります。そのため、返金やキャンセルに関するルールを事前に明確にしておくことが重要です。
クーリングオフについて
契約金額が5万円を超えて契約期間が1カ月以上の場合、契約日から8日以内であれば、お客様は手数料を負担することなく契約を解除できます。
中途解約について
契約期間中であれば、お客様は解約手数料を負担することで中途解約が可能です。この場合、サロン側は未使用分の施術回数に相当する金額を返金する義務があります。解約損料は契約残額が20万円以下なら10%、20万円を超える場合は一律2万円が上限です。手数料の金額や返金の計算方法を事前に明確にしておくことがトラブルを防止するためのポイントです。
必要書面
契約金額が5万円を超え、かつ契約期間が1カ月以上の場合には、法律上、以下の2つの書類をお客様に交付する必要があります
1.概要書面
これは、お客様が契約内容を理解し、契約を結ぶかどうか判断する際に必要な情報を示す書類です。主に、施術メニューの詳細や料金、契約内容が記載されます。この書類は、サロンが契約を結ぶ前に必ず交付する必要があります。
2.契約書面
契約を正式に結ぶ際に交付する書類で、料金の支払方法や支払時期、キャンセルに関する特約事項などが記載されます。この契約書は、お客様にとって契約の証拠となる重要な書類です。
回数券の販売を成功させる販促・運用のポイント
回数券の販売を成功させるには、以下のような販促方法や運用が効果的です。
- カウンセリングでの提案シナリオの設計
- 回数券を使い切ったお客様へのアフターケア
- クーポンサイト・SNS・店頭告知の活用
- デジタル回数券の導入
詳しく解説します。
カウンセリングでの提案シナリオの設計
カウンセリングのスキルには個人差があるため、スタッフ全員で基本的な提案の流れを共有しておくことが大切です。具体的には、以下のようなシナリオを共有することで、提案の質を均一化できます。
1.お客様の悩みをヒアリングする
「どんなお悩みがありますか?」とお客様の要望や悩みを丁寧に聞き出し、共感を示します。
2.目標に合わせた施術プランを提案する
「この施術なら〇〇回でリフトアップが期待できます」といった形で、目標を共有しながら施術内容を提案します。
3.回数券の具体的なメリットを伝える
「この回数券なら、通常より〇〇円お得になります」と、お得感をわかりやすく伝えます。
また、スタッフが繰り返し練習や実践を重ねることで、カウンセリング力は向上します。お客様を理解し、適切な提案ができるようになると、回数券の購入率が自然と上がり、リピート率や売上アップにもつながるでしょう。
回数券を使い切ったお客様へのアフターケア
回数券を利用しているお客様の中には、「施術の効果を得たい」というよりも、「回数券を無駄にしたくないから使い切ろう」と考えて来店される方も少なくありません。こうしたお客様は、回数券を使い切ると来店の動機を失いやすく、その後の継続利用につながらないことがあります。
そこで、回数券を使い切る前に次のステップを提案することが大切です。例えば、残りの回数が少なくなった段階で、初回のデータと現在の状態を一緒に振り返りながら、「施術を続けることでさらに期待できる効果」について説明します。
このように、施術の変化や改善をお客様自身に実感してもらうことで、継続利用の意欲を高められます。
また、最後の1回を迎える前に、今後のケアについて相談を始めるのも効果的です。早い段階で「次はどのようなケアを目指していくか」をカウンセリングしていくことでスムーズな提案ができます。
アフターケアは単に継続利用を促すためのものではなく、お客様との信頼関係を築き、サロンの価値を伝える大切な場面です。お客様が施術の効果を実感し、サロンに通い続ける意義を感じてもらえるよう、丁寧な対応を心掛けましょう。
クーポンサイト・SNS・店頭告知の活用
回数券を販売するには、クーポンサイトやSNS、店頭での告知を活用して情報を広めることが重要です。
その際、どの媒体でもお客様がお得感を感じられるように、具体的なメリットをわかりやすくアピールすることがポイントです。
クーポンサイトでは、「通常〇〇円の施術が、回数券なら1回あたり〇〇円になる」といった具体的な割安感を数字で示すことで、お客様に魅力が伝わりやすくなります。
また、SNSではビジュアルを重視し、施術のビフォーアフター写真やお客様の声を活用して、効果をわかりやすく伝えましょう。「期間限定特典付き」などの情報を添えると購買意欲が高まります。
店頭では、ポスターやパンフレットを活用し、直接お客様にアプローチするのが効果的です。スタッフが回数券について直接説明することで、購入への信頼感を高められます。
お得感を具体的に伝える情報発信を心がけることで、より多くのお客様に回数券の魅力を感じてもらえるでしょう。
デジタル回数券の導入
デジタル回数券は、多くのサロンで導入されているシステムです。お客様はスマートフォンやパソコンで管理できるので、紛失や破損の心配がないのが大きな魅力です。また、残りの回数や有効期限をいつでも確認できるため、来店の計画を立てやすくなります。
サロン側にとっても、デジタル化することで確認や管理の手間を減らせるため、業務の効率化が可能です。
ただし、導入にはシステムの初期費用や月々の利用料といった費用が発生する場合があるため、コストとメリットを比較検討することが大切です。
回数券管理の手間を減らすならサロエボ
回数券は、お客様の継続した来店や売上の安定につながるなど多くのメリットがあります。一方で、残り回数や有効期限などの管理に手間がかかる点に注意が必要です。
そこで、回数券を効率的に運用できるPOSシステム「サロエボ」の導入がおすすめです。
サロエボを活用することで、回数券の情報をすべてデジタルで管理できます。システム上で残りの施術回数や有効期限を即座に確認できるため、お客様への対応がよりスピーディーになります。また、来店履歴やこれまでの施術内容も一元管理されているため、お客様一人ひとりに合わせた提案もしやすくなります。
サロン特化型のPOSシステム「サロエボ」
回数券管理の手間を大幅に削減
サロエボを導入すると、会計時の画面にチケット番号、購入日、使用回数、有効期限などの情報がすべて表示されます。お客様から問い合わせがあった場合も、迅速な回答が可能です。
また、売上管理や利用状況の集計機能と連動しているため、「どの回数券がよく売れているか」や「どんなメニューと相性が良いか」といった分析も効率よく行えます。日々の業務が効率化され、サロンの運営がスムーズになります。
サロンの外からでも管理ができる
サロエボはスマートフォンやタブレットにも対応しているため、どこからでもアクセスが可能です。インターネットに接続できる環境さえあれば、自宅や外出先からも予約状況や顧客情報を確認できます。
サロン全体の運営状況をリアルタイムで把握できるだけでなく、各店舗の状況を一元管理できるため、無駄のない効率的な運営が実現します。
まとめ
回数券は、エステサロンにおいて安定した売上とお客様の継続的な来店を促すために重要なツールです。ただし、有効期限切れや返金トラブルといった問題が起きる可能性もあるので、導入前には運用体制を整えることが大切です。
また、回数券の運用や管理には労力がかかるため、効率的に進めるならサロエボの導入がおすすめです。サロエボを導入することで、会計時の画面にチケット番号、購入日、使用回数、有効期限などの情報がすべて表示されるため、お客様からの問い合わせにもすぐに対応できます。
効率的な運用体制を整えることで、より多くの時間をお客様との対話に使うことができます。お客様の気持ちに寄り添いながら、回数券を上手に取り入れていくことで、サロンの価値を高めていけるでしょう。